TFCC損傷で認められる後遺障害等級や認定のポイントとは?
交通事故被害にあって、手首の関節部分に治療後も痛みが残る場合は、TFCC損傷という後遺障害の可能性があります。
TFCC損傷の後遺障害が残った場合に認められうる後遺障害等級認定にはどのようなものがあるでしょうか?
また、適切な後遺障害等級を認定してもらうために注意しておきたいポイントはどういった事項があるでしょうか。
TFCC損傷とは
TFCCとは、英語でいうとTriangular Fibrocartilage Complexという体の部位を略したものです。日本語で表すと三角線維軟骨複合体という部分で、手関節の小指側にある軟部組織をいいます。
具体的には三角線維軟骨とその周囲の靱帯の複合体のことをいいます。TFCCの存在により、人の手首は捻る、ねじるなど、複雑な動きが可能になっているといえます。
そして、TFCC損傷とは、手関節に強いねじれと背屈力(手の甲を反らす力)が加わった場合に上記の部位であるTFCCを損傷してしまった状態をいいます。
交通事故被害によりTFCC損傷でよくみられる原因としては、被害者がバイクや自転車に乗車して走行している途中に車に衝突されるなどの交通事故被害に遭って転倒してしまい地面に強い力で手をついてしまった、車のハンドルを握った状態で追突されたなど、手関節に急に強い力がかかったときに発症することがあります。
TFCC損傷では手関節を痛めてしまいますので、手関節を動かしたときに動かせる範囲が狭まるという可動域制限や、手首に痛みを感じたり、手首を小指側に動かしたときに痛みを伴うクリック音が鳴ったりするなどの不快な症状が現れます。
痛みが現れやすい日常動作としては、たとえばドアノブを回したり、雑巾を絞ったりするなど手関節部分をひねる動作をしたときなどがあります。
TFCC損傷の診断方法
TFCC損傷は、被害者の自覚症状である手関節の痛みの様子や場所、外部からの観察、MRI検査や関節鏡検査などを用いて診断します。
TFCCは軟部組織のため、レントゲン審査のみでは診断できないため、MRI等が必須です(脂肪抑制TI強調画像かgradient echo T2強調画像が有用とされます)。画像上の判別は医師でもかなり困難といわれているため、MRI画像を添付した医療照会回答書を作成し、診断した主治医に損傷個所を指摘してもらえると有用でしょう。
また靱帯損傷を裏付ける検査としては、手首を外側に動かす尺屈テスト、尺屈させたまま手首を小指側に回す尺屈回外テスト等があります。
TFCC損傷の治療方法は、サポーター等を用いて極力手首を動かさないようにして、薬で炎症や痛みを緩和しながら、経過観察をします。
また、このような治療でも回復しきらず慢性化してしまった場合には、内視鏡手術により、TFCC損傷部の切除や再建手術を行うこともあります。
後遺障害として認定されるのは、主治医と本人がこれ以上治療を続けても良くも悪くもならないと判断する症状固定後の症状ですが、症状固定までは平均的には6か月から1年程度かかるようです。
TFCC損傷の後遺障害
TFCC損傷の後遺障害については、手首の可動域が制限される場合は、機能障害として重い順から8級6号、10級10号、12級6号が認定される可能性があります。
また、手首に慢性的な痛みが感じられる場合、神経障害として重い順から12級13号、14級9号が認定される可能性があります。
手首の可動域制限
TFCC損傷により、前腕回内外運動に可動域制限が生じ、遠位橈尺関節に不安定性が生じます。このために手首を自由に動かせる範囲である可動域が狭まってしまった場合は、機能障害としての後遺障害等級認定が考えられます。
可動域の測定は、手関節の主要運動(日常動作に重要な動き)である屈曲という手首を下方向に曲げる動きと伸展という手首を上げる動きと、参考運動(日常の動作で主要運動よりも重要でない動き)は、撓屈という手首を親指側に水平に曲げる動きと尺屈という手首を小指側へ水平に曲げる動きを測定して行います。
具体的には、整形外科医等が測定容量にしたがい、角度計という器具を使用して、健側(障害のない側の手首)の可動域と比較し測定されます。
手関節の可動域は、屈曲と伸展を一つの運動と考えて、両方の可動域角度を合計し、左右の患側(障害のある側)と健側を比較しますが、左右とも患側の場合は、参考可動域角度(正常値)と比較します。
可動域制限として認められうる後遺障害等級は重いほうから、8級6号「関節の用を廃したもの」10級10号「関節の機能に著しい障害を残すもの」12級6号「関節の機能に障害を残すもの」の3段階があります。
手首の神経障害
手関節部に神経障害といって、TFCC損傷に起因して痛みが残ってしまう場合も後遺障害等級が認定される可能性があります。
神経障害について認定されうる後遺障害等級は、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」と14級9号「局部に神経症状を残すもの」の2種類があります。
どちらの級に該当するかは、神経障害が他覚的所見(MRI等の画像検査や神経学的検査)によって客観的にも証明できる場合には12級13号、他覚的所見まではないものの被害者が訴える自覚症状が、医学的に説明できる場合には14級9号という区分けとなります。
TFCC損傷の後遺障害等級認定のポイント
TFCC損傷について適切な後遺障害等級認定を受けるために注意しておくべきことは何でしょうか。
まず、前提として、TFCC損傷は比較的後遺障害等級が認定されにくい部類の後遺障害であることを認識しておく必要があります。
理由としては、TFCC損傷の場合は、事故直後はそれほど痛みが強くないものの時間の経過とともに痛みが強くなるケースが多いため、受診が遅れてしまい、交通事故の時期と診断の時期にずれが生じやすいという点があります。
TFCC損傷は他のアクシデントでも発生しうるので、事故と診断時期がずれるほど、TFCC損傷が交通事故によって発生したということの因果関係の証明が難しくなってしまいます。
そのため、交通事故で手首に衝撃を受けたと感じた場合は、事故直後から受診してMRIなどの精密審査を受けておきましょう。
また、TFCC損傷は、神経障害など客観的な画像所見には表れない場合もあり、そういった場合には、適切な後遺障害診断書を用意しなければ、後遺障害等級が認定されにくい可能性があります。
そのため、後遺障害等級申請にあたっては、被害者申請という被害者が自ら申請書類を用意して自賠責事務所に申請する方法をとりましょう。
また、交通事故被害の取扱いが多い弁護士に依頼して、収集すべき資料や医師への依頼方法を相談しつつ、申請の準備をすすめることもおすすめです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
TFCC損傷についての後遺障害等級認定についてご参考になれば幸いです。