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改正債権法~交通事故実務に与える影響②

代表弁護士 伊藤 一星 (いとう いっせい)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号49525)
保有資格 / 弁護士

今回は前回からの続き、時効の部分の改正についてです。

「時効の更新及び完成猶予」の改正について

まず「時効の更新及び完成猶予」の改正について話をしていきます。

この点の改正ですが、現行民法の時効の「中断」事由及び「停止」事由について、改正民法は時効の「更新」事由及び「完成猶予」事由へと再構成して整理されています。

(私達弁護士が長年親しんできた「中断」「停止」の表現が変更になりましたので、頭の切り替えが必要です・・・)

時効の完成猶予の事由

時効の完成猶予の事由は以下の通りです。

ア 裁判上の請求、支払督促の申立て、訴えの提起前の和解・民事調停・家事調停の申し立て、倒産手続参加(改正民法147条1項)

  • 現行民法では、これらは時効中断事由であるが、訴えの却下又は取下げの場合等には時効中断の効力が生じないとされています(現行民法149条等)。
  • 改正民法では、これらの手続きが終了するまで時効の完成は猶予され、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合は、終了後6箇月を経過するまで時効の完成が猶予されるものとされます。

イ 強制執行、担保権の実行、形式的競売、財産開示請求(改正民法148条1項)

  • 現行民法では、差押えが時効中断事由とされているが(現行民法147条2号)、取り消された場合には時効中断の効力は生じないとされています(現行民法154条)。
    改正民法では、申立の取下げや取消しによって終了した場合は、終了後6箇月を経過するまでの時効の完成が猶予されます(改正民法148条1項)。

ウ 仮差押え・仮処分(改正民法149条)

  • 同様に、現行民法では時効中断事由とされており、取り消された場合には時効中断の効力が生じないとされていましたが、改正によって終了後6箇月を経過するまでの時効の完成が猶予されます。

エ 催告(改正民法150条)

  • 催告は、これがあったときから6箇月を経過するまでの間は時効の完成が猶予されるものとされました。
  • 改正民法150条2項は従来の実務を明文化したものと考えられます。

オ 未成年者又は成年被後見人と時効(改正民法158条)、夫婦間の権利の時効(改正民法159条)、相続財産に関する時効(改正民法160条)

  • オ 未成年者又は成年被後見人と時効(改正民法158条)、夫婦間の権利の時効(改正民法159条)、相続財産に関する時効(改正民法160条)

カ 天災等と時効(改正民法161条)

  • 現行民法でも停止事由とされているが、完成猶予の期間が2週間から3か月に延長されているので注意しなければなりません。

時効の更新についての事由

時効の更新についての事由は以下の通りです。

  • ア 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによる権利の確定(改正民法147条2項)
  • イ 強制執行、担保権の実行、形式的競売、財産開示請求で権利の満足に至らない場合(改正民法148条2項)
  • ウ 承認(改正民法152条)

いわずもがなですが、これらの事由があれば、新たに時効が進行していきます。

これらの経過措置は、改正民法施行日前に時効の中断、停止事由が生じた場合には、なお従前の例によるとされています。

以上、改正が実務に与える影響点について考察してみました。

基本的には判例での運用が条文となり、今まで効果が不明確であった「中断」「停止」が「時効完成猶予」「更新」という表現で明確に整理され、大きく変化が見込まれるのではないか、と考えます。

「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」の改正

次は「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」の改正です。こちらは新設条文になります。

具体的には当事者間で権利に関する協議を行う旨の書面による合意があった場合に時効の完成を猶予させる制度です。

現行民法では、当事者間で解決に向けた協議をしている場合でも時効の完成が近づくと、時効中断のために調停申立などを検討せざるを得なかったが、本制度によりそれらの負担を回避することができるとされています。

この制度の留意点は以下の通り。

  • 書面性が要件とされている。書面によらない場合には、効力は発生しない。
  • 時効完成の猶予期間は、
    ①合意があった時から1年を経過した時
    ②協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときはその期間を経過した時
    ③当事者の一方が他方に対して協議続行を拒絶する旨の書面による通知をした時から6箇月を経過した時のうちの早い時まで。
  • 再度の合意も認められる。しかし、通算5年を超えることができないとされている(改正民法151条2項)。
  • 催告による時効完成猶予との関係は改正民法151条3項に規定あり。
  • 債務承認(改正民法152条)との関係を区別する必要がある。(書面には合意内容に債務承認が含まれていないことを明確にしておく必要がある。)

経過措置について

経過措置についてですが、改正法施行日前の協議による合意は効力を生じないとされています。

最後に

この時効の完成猶予の合意の条文新設が実務に与える影響を考察してみました。

公益財団法人日弁連交通事故相談センターが行っている示談あっせん等には、申立に時効の完成猶予の効力は生じないとされています。

しかしながら、このような改正民法151条による「書面による合意」を併用することで、時効の完成猶予の効力を生じさせることができるのではないでしょうか。

(もちろん双方の合意が要件となりますが・・・)

実務上、加害者側から支払を受けることについては双方納得しているけれども、過失割合の割合が決まらず時効が迫っている・・・といった事態は少なくなったように思います。

当事者間において債務承認の確認書を作成する等して対応をしてきましたが、新設条文により合意による完成猶予が可能になったことは大きな影響があると思われます。

以上時効についての改正について2回にわたって話をしてきましたが、この改正が交通事故実務に与える影響は大きいと考えられます。

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