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咀嚼機能に後遺障害が出た場合の後遺障害等級 - 宇都宮の交通事故弁護士

代表弁護士 伊藤 一星 (いとう いっせい)
弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表社員(パートナー弁護士)
所属 / 栃木県弁護士会 (登録番号49525)
保有資格 / 弁護士

交通事故によって歯が折れた場合に、認定を受けることができる可能性のある後遺障害等級は「第10級4号」「第11級4号」「第12級3号」「第13級5号」「第14級2号」、咀嚼機能に後遺障害が残り、認定を受けることができる可能性のある後遺障害等級は「第1級2号」「第3級2号」「第4級2号」「第6級2号」「第9級6号」「第10級3号」です。

以下、いかなる場合に後遺障害等級認定を受けることができるかという後遺障害等級の条件、弁護士(裁判所)基準による後遺障害慰謝料(目安)などについて解説してまいります。

歯が折れた場合の後遺障害

歯が折れた場合の後遺障害とは具体的には歯の喪失と欠損です。

交通事故によって歯を喪失する、歯が欠損することによって認定を受けることができる可能性のある後遺障害等級は「第10級4号」「第11級4号」「第12級3号」「第13級5号」「第14級2号」です。

歯の後遺障害の後遺障害等級、後遺障害等級認定の条件と後遺障害慰謝料の関係は以下のとおりです。

後遺障害等級 後遺障害等級認定の条件 後遺障害慰謝料

第10級4号

14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

550万円

第11級4号

10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

420万円

第12級3号

7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

290万円

第13級5号

5歯以上に対して歯科補綴を加えたもの

180万円

第14級2号

3歯以上に対して歯科補綴を加えたもの

110万円

以上から、歯の後遺障害で後遺障害等級の認定を受けるには、少なくとも3本以上の歯の歯科補綴を受ける必要があります。

「歯科補綴を加えたもの」とは、現実に喪失又は著しく欠損した(見えている部分の4分の3以上を欠損した)歯に対する補綴をいいます。

喪失とは、交通事故によって直接歯を失った場合はもちろん、治療のために歯科医師が必要と判断して抜歯して失った場合も含まれます。補綴とは、歯の喪失又は著しい欠損に対して、義歯、クラウン、ブリッジなどの人工物を用いて修復治療を施すことをいいます。

ここで注意しなければならないのは歯科補綴を加えた歯の数え方です。つまり、カウントされる歯の対象には、

「交通事故や治療によって喪失・欠損した歯」に加え、「治療の必要から欠損を余儀なくされた歯(現実に喪失、欠損した歯の周辺の支台歯として使用された歯)」も、見えている部分の4分の3以上を欠損した場合には含まれるということです。

この点、通常、交通事故によって歯を2本喪失したとしても、後遺障害等級認定を受けることはできません。

しかし、その喪失した歯の両サイドにブリッジを施し、その2本の歯の4分の3以上を欠損した場合は4本の歯を歯科補綴したことになります。したがって、この場合は後遺障害等級第14級2号を受けることができるということになります。

咀嚼機能の後遺障害

咀嚼機能とは食べ物を咬み砕く機能のことです。咀嚼機能に関する後遺障害とは、咀嚼機能の全部又は一部を失うことです。

交通事故によって咀嚼機能の全部又は一部を失うことによって認定を受けることができる可能性のある後遺障害等級は「第1級2号」「第3級2号」「第4級2号」「第6級2号」「第9級6号」「第10級3号」です。

咀嚼機能の後遺障害に関する後遺障害等級、後遺障害等級認定の条件と後遺障害慰謝料の関係は以下のとおりです。

後遺障害等級 後遺障害等級認定の条件 後遺障害慰謝料

第1級2号

咀嚼及び言語の機能を廃したもの

2800万円

第3級2号

咀嚼又は言語の機能を廃したもの

1990万円

第4級2号

咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの

1670万円

第6級2号

咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの

1180万円

第9級6号

咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの

690万円

第10級3号

咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの

550万円

咀嚼機能を廃したもの」とは、流動食以外は摂取できないものをいいます。

咀嚼機能に著しい障害を残すもの」とは、お粥又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないものをいいます。

咀嚼機能に障害を残すもの」とは、ある程度の固形物は摂取できるが、これに制限があって、咀嚼が十分でないものをいいます。

たとえば、ごはん、煮魚、ハムなどの比較的柔らかいものは咀嚼できるが、ピーナッツ、たくあん、らっきょうなどの一定の固さのある食べ物だと咀嚼できない、あるいは咀嚼が十分でない、という場合がこれにあたります。

また「言語の機能を廃したもの」とは、4種の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)のうち、3種以上を発音できないことをいいます。

「言語の機能に著しい障害を残すもの」とは、2種の発音ができない又は言語のみでは意思疎通ができないことをいいます。「言語機能に障害を残すもの」とは、4種の語音のうち、1種の発音をできないことをいいます。

咀嚼機能の後遺障害が認定されるには、MRI、CTなどで他覚的所見が認められ、その結果が咀嚼状況報告表(被害者やそのご家族などが作成する、咀嚼状況に関する報告表)と一致することが必要です。

咀嚼機能の障害の他にも、口に関する後遺障害としては、頭部外傷やあご周辺組織の損傷による味覚の脱失(喪失)、減退があります。味覚の有無は濾紙(ろし)ディスク法という検査方法によります。

この検査で、甘味、塩味、酸味、苦味のすべてを感じる取ることができない場合は「味覚脱失」として後遺障害等級12級相当が認定されます。

また、これらの味質の内、一つでも味を感じることができない場合は「味覚減退」として後遺障害等級14級相当が認定されます。味覚障害は日時の経過により漸次回復する場合が多いことから等級の認定は原則として症状固定から6か月を経過した後に行う。

まとめ

交通事故によって歯が折れた、治療によって歯を失った、食べ物がうまく噛めない、言葉を上手く発せなくなった、味覚がなくなった、減退したなどという場合は口の後遺障害等級認定を受けることができる可能性があります。

適切な後遺障害等級認定を受けるためには、早めに弁護士に相談しましょう。

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