鎖骨骨折の後遺障害等級 - 宇都宮の交通事故弁護士
交通事故で鎖骨骨折した場合に認定を受けることができる可能性のある後遺障害等級は「第8級6号」「第10級10号」「第12級5号」「第12級6号」「第12級13号」「第14級9号」です。
以下、いかなる場合に後遺障害等級認定を受けることができるのかという後遺障害等級ごとの条件、弁護士(裁判所)基準による後遺障害慰謝料目安などについて解説してまいります。
交通事故で鎖骨骨折が起こりやすいケース
鎖骨は首元から肩まで伸びている骨です。そのため路面などに肩を強く打ち付けると鎖骨が折れてしまうことがあります。
交通事故で鎖骨骨折が起こりやすいのは、バイクや自転車を運転中に交通事故に遭い、転倒して路面に肩を強く打ち付けた場合です。また、歩行中に交通事故に遭った場合も同様です。
鎖骨骨折した場合の症状
鎖骨を完全に骨折した場合は患部が腫れて激しい痛みを感じます。また、肩に近い部分(遠位端)を骨折すると、腕を上げ下げすることができない、動かせる範囲が狭まるなどの症状が出ます。
さらに、鎖骨の周囲には神経が通っており、その神経を傷つけてしまうと手指がしびれる、麻痺するなどの症状が現れ、骨折の治療が終わった後もその症状が残ることがあります。
鎖骨骨折と後遺障害等級
交通事故で鎖骨骨折した場合に認定を受けることができる可能性のある後遺障害等級は「第12級5号」(変形障害)「第8級6号」「第10級10号」「第12級6号」(肩に可動域制限が出た場合の機能障害)「12級13」「14級9号」(痛みが残った場合の神経障害)です。
鎖骨骨折の後遺障害等級、後遺障害等級認定の条件と弁護士(裁判所)基準に基づく後遺障害慰謝料(目安)の関係は以下のとおりです。
■変形障害
後遺障害等級 | 後遺障害等級認定の条件 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|
第12級5号 |
鎖骨に著しい変形を残すもの |
290万円 |
鎖骨の真ん中あたり(骨幹部)が折れた場合に変形障害という後遺障害が残る可能性があります。鎖骨に「著しい変形を残すもの」とは、裸体になったときに変形が明らかにわかる程度のもの、という意味です。
レントゲン写真によってしか分からない程度の変形であれば「著しい変形を残すもの」にはあたりません。
■機能障害
後遺障害等級 | 後遺障害等級認定の条件 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|
第8級6号 |
1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
830万円 |
第10級10号 |
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
550万円 |
第12級6号 |
1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
290万円 |
冒頭でも述べましたが、鎖骨は首元から肩まで伸びている骨ですので、骨折した場所によっては肩の動きにも影響を与えます。
肩関節(3大関節(肩関節、肘関節、手関節)のうちの1つ)の可動域が制限される場合(肩を動かせない、腕を上げることができない場合)は機能障害という後遺障害が残る可能性があります。
機能障害の有無は「屈曲」、「外転」という肩関節の主要運動(各関節における日常動作にとって最も重要な運動)によって確認します。
「屈曲」とは、いわゆる「気を付け!」とした状態(両腕をぶら下げ体に密着させた状態)から前を通って頭部まで腕を上げる運動のことをいいます。このとき腕を全くあるいはほとんど上げることができない場合が肩関節の「用を廃したもの」として後遺障害等級8級6号に当たります。
また、腕を90度までしか上げることができない場合、すなわち、腕を前へならえの状態までしか上げることができない場合が「著しい障害を残すもの」として後遺障害等級10級10号、90度から135度まで上げることができる場合が「機能に障害を残すもの」として後遺障害等級第12級6号に当たります。
また、「外転」とは、これも「気をつけ!」をした状態から腕を肩と並行となる状態に(脇の角度が90度になる)まで上げ、それからさらに腕が一直線となるように耳の横まで上げる(角度が先の90度から180度にまで腕を上げる)運動のことをいいます。
このとき腕を全くあるいはほとんど上げることができない場合が肩関節の「用を廃したもの」として後遺障害等級8級6号に当たります。
また、角度が90度以下、すなわち腕を肩の高さまで上げることができない場合が「機能に著しい障害を残すもの」として後遺障害等級第10級10号に当たります。
他方、角度が90度から135度、すなわち肩と耳の中間よりも上に腕を上げることができない場合が「機能に障害を残すもの」として後遺障害等級第12級6号に当たります。
なお、機能障害は「屈曲」、「外転」のうちいずれか一つの運動ができない場合に認められます。たとえば、屈曲は問題なくできるけれども、外転が全くできないあるいはほとんどできない、という場合はやはり後遺障害等級第8級6号に当たります。
以上からすれば、可動域制限がある場合でも、角度が135度を超える場合には機能障害による後遺障害等級の認定を受けることができない、ということになります。
■神経障害
後遺障害等級 | 後遺障害等級認定の条件 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|
第12級13号 |
局部に頑固な神経症状を残すもの |
290万円 |
第14級9号 |
局部に神経症状を残すもの |
110万円 |
骨折の治療が終わった後に、痛みなどの神経症状が残る場合に神経障害の後遺障害が残る可能性があります。後遺障害第12級と第14級に違いは痛みが他覚的にも証明できるかどうかです。
レントゲンや、MRI画像などで痛みを客観的に証明できる場合は後遺障害等級第12級13号、客観的には証明できないが、その他の証拠で証明できる場合は後遺障害等級第14級9号です。
まとめ
鎖骨骨折はバイク、自転車の運転時、歩行時に負いやすい怪我です。腕が上がらない、手指にしびれや麻痺が残るなどの症状が出てきた場合は後遺障害等級認定の申請を視野に、必要な治療、検査を継続して受けておく必要があります。