骨折した場合に認められる後遺障害 - 宇都宮の交通事故弁護士
交通事故の骨折で後遺症が残り、後遺症が残ったことによる慰謝料(後遺障害慰謝料)を獲得するためには、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
もっとも、そもそも「後遺障害、後遺障害等級って何?」、「等級によって具体的にいくらの慰謝料を獲得できるの?」と疑問に思われるかと思います。
そこで、この記事では
- 交通事故における後遺障害、後遺障害等級
- 後遺障害慰謝料に関する3つの基準
- 骨折した場合の後遺障害慰謝料
について詳しく解説してまいります。
交通事故における後遺障害とは
後遺障害とは、医師により、交通事故に起因する後遺症の症状が将来的にも改善する見込みがなくなった状態(症状固定)と診断され、その診断以降も残存する障害のことをいいます。
骨折した部位や骨折の仕方などによって具体的な後遺障害は様々ですが、もっとも一般的な例は、「骨折箇所に痛み(神経症状)が残った」という場合です。
痛みが残る原因としては、骨同士がうまくくっつかなかった(癒合しなかった)ことなどが考えられます。
交通事故から数か月も経過したのに骨折箇所に痛みが残る、という場合は後遺障害を疑ってみる必要があります。
後遺障害には等級(後遺障害等級)がある
後遺障害には、介護を要する後遺障害の場合は1級と2級が、それ以外の場合は1級から14級までの等級が設けられています。
そして、さらにその等級内で1号から最大17号まで区分され、等級ごとに受け取ることができる後遺障害慰謝料(後遺障害による慰謝料)の額が決められています。
等級が高くなるにしたがって、受け取ることができる後遺障害慰謝料の額は少なくなります。
後遺障害等級慰謝料算定に関する3つの基準
そして、この後遺障害慰謝料を算定するために、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士(裁判所)基準
の3つの基準があります。
自賠責基準は自動車損害賠償保障法等に基づく基準で、受け取ることができる後遺障害慰謝料(及び後遺障害逸失利益)の最低の限度額が定められています。
弁護士(裁判所)基準は、日弁連交通事故センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(通称、赤本)に掲載されています。
弁護士基準は過去の裁判例などを基に作成されています。
3つの基準の中で後遺障害慰謝料が最も高額となるのは弁護士基準で、次に任意保険基準、自賠責基準の順となります。
任意保険基準は一般に公開されていませんから、以下では後遺障害慰謝料に関する自賠責基準、弁護士(裁判所)基準をご紹介します。
自賠責基準
<介護を要する場合>
第1級 | 1650万円 | 第2級 | 1203万円 |
---|
<介護を要しない場合>
第1級 | 1150万円 | 第8級 | 331万円 |
---|---|---|---|
第2級 | 998万円 | 第9級 | 249万円 |
第3級 | 861万円 | 第10級 | 190万円 |
第4級 | 737万円 | 第11級 | 136万円 |
第5級 | 618万円 | 第12級 | 94万円 |
第6級 | 512万円 | 第13級 | 57万円 |
第7級 | 419万円 | 第14級 | 32万円 |
注)上記基準は令和2年4月1日以降に発生した交通事故に適用されるものです。
それ以前に発生した交通事故については上記よりも若干低い額の基準が適用されます。
弁護士(裁判所)基準
注)上記はあくまで目安です。
交通事故状況等に応じて増減することがあります。
骨折(肋骨骨折)と後遺障害、後遺障害等級、後遺障害慰謝料
では、骨折の中でも比較的多い「肋骨骨折」を例にとり、いかなる後遺障害、後遺障害等級となり、いくらの後遺障害慰謝料を受け取ることができるのか具体的にみていきましょう。
まず、肋骨が骨折していると、骨折箇所が痛い、かかんだとき・起きたとき、深呼吸・咳をしたときに痛みが出るなどの症状が現れます。
そして、骨折部が癒合して変形する、あるいは骨が欠損して、皮膚の上からでもその変形・欠損が明らかにわかる場合には「肋骨に著しい変形を残すもの」として後遺障害等級12級5号に該当します。
後遺障害等級12級5号の後遺障害慰謝料は自賠責基準で94万円、弁護士(裁判所)基準で290万円(目安)となります。
ちなみに、鎖骨、頬骨、肩甲骨、骨盤骨の骨折で著しい変形を残した場合も同様です。
次に、骨の癒合に問題なく骨の変形等は認められないものの、骨折箇所に痛みや腫れ等が残ってしまう場合があります。
この場合、「局部に頑固な神経症状を残すもの」と認められる場合には後遺障害等級12級13号に、「局部に神経症状を残すもの」と認められる場合には後遺障害等級14級9号に該当します。
そして、前者の後遺障害慰謝料は自賠責基準で94万円、弁護士(裁判所)基準で290万円(目安)となります。
また後者の後遺障害慰謝料は自賠責基準で32万円、弁護士(裁判所)基準で110万円(目安)となります。
なお、12級13号にあたるか14級9号にあたるかの違いは、症状はもちろん、レントゲンなどによる他覚的所見が認められるか否か(認められる場合は12級13号、認められないものの症状の訴えに連続性、一貫性等が認められる場合は14級9号)によります。
まとめ
骨折による後遺症が残った場合は慰謝料(後遺障害慰謝料)を増額させ、最終的に受け取る賠償金を増額できる可能性があります。
また、上記で紹介した肋骨骨折の例は一例にすぎず、骨折箇所や症状によって様々な後遺障害等級を獲得できる可能性があります。
もっとも、適切な慰謝料等を獲得するためには、適切な後遺障害等級を獲得しなければなりません。
どんな後遺障害等級を獲得できる可能性があるのか、獲得するためにはどうすればよいのかお困りの方は早めに弁護士に相談する必要があります。