股関節の脱臼・骨折の後遺障害 - 宇都宮の交通事故弁護士
交通事故で股関節を脱臼・骨折した場合に認定を受けることができる可能性のある後遺障害等級は「第8級7号」「第10級11号」「第12級7号」(機能障害)「第8級5号」「第10級8号」「第13級8号」(下肢の短縮)「12級13号」「14級9号」(神経障害)です。
以下、後遺障害等級ごとの条件、後遺障害慰謝料について解説いたします。
交通事故で股関節脱臼・骨折が起こりやすいケースと症状
交通事故で股関節脱臼・骨折が起こりやすいのは、運転席や助手席に乗っている際、車両との正面衝突又は電柱等の物との衝突により、膝をダッシュボードに打ち付けてしまったというケースです。
脱臼とは関節が外れて、骨が正常な位置からずれてしまうことをいい、大きく分けて「後方脱臼」「前方脱臼」「中心性脱臼(寛骨臼骨折)」の3種類があります。
このうち交通事故で多く発症するのが「後方脱臼」です。「後方脱臼」とは、股関節に前方から後方に大きな力が加わることで、大腿骨の骨頭(大腿骨の頭にあり、寛骨臼(骨盤の一部)にはまり込んでいる骨)が後方にズレることによって生じる脱臼のことをいいます。
また、後方脱臼と同時に起こりやすいのが寛骨臼の骨折です。股関節を脱臼・骨折すると、患部に痛みや腫れが生じます。股関節の動きが制限される、異常な方向に動くという症状が出ます。
脱臼は骨折と比べ症状が軽いイメージですが、脱臼により骨頭の血管を損傷し、骨頭に必要な栄養や酸素が供給されなくなると骨頭が壊死に至る可能性があります(発症から24時間以内に脱臼から元の状態に戻す必要があります)。
股関節脱臼・骨折と後遺障害等級
交通事故で股関節を脱臼・骨折した場合に認定を受けることができる可能性のある後遺障害等級は「8級7号」「第10級11号」「第12級7号」(機能障害)「8級5号」「10級8号」「13級8号」(下肢の短縮)「12級13号「14級9号」(神経障害)です。
股関節脱臼・骨折の後遺障害等級、後遺障害等級認定の条件と弁護士(裁判所)基準に基づく後遺障害慰謝料(目安)の関係は以下のとおりです。
■機能障害
後遺障害等級 | 後遺障害等級認定の条件 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|
第8級7号 |
1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
830万円 |
第10級10号 |
1下肢の3大関節中の1関節に著しい機能の障害を残すもの |
550万円 |
第12級7号 |
1下肢の3大関節中の1関節に機能障害を残すもの |
290万円 |
機能障害の有無は「屈曲」「伸展」「外転」「内転」という股関節(3大関節(股関節、ひざ関節、足関節)のうちの1つ)の主要運動(各関節における日常動作にとって最も重要な運動)によって確認します。
「屈曲」は仰向けになり、脚を伸ばした状態から脚を持ち上げて曲げる運動です。「伸展」とは、屈曲とは反対に、うつぶせになり、脚を伸ばした状態から脚を持ち上げる運動です。
「外転」とは、仰向けになり、脚を伸ばした状態から脚をハの字型になるよう外側に開く運動、「内転」とはその逆、つまり内側に動かす運動です。
この屈曲、伸展、外転、内転の運動が全くできない、あるいは少ししかできない場合が「1関節(股関節)の用を廃したもの」として後遺障害等級第8級7号に当たります。
また、健側(脱臼・骨折をしていない側)の可動域と患側(脱臼・骨折している側)の可動域とを比べて、屈曲、伸展、外転、内転の可動域が2分の1以下に制限されている場合が「著しい機能障害を残すもの」として後遺障害等級第10級10号に当たります。
同様に、健側の可動域と患側の可動域とを比べて、屈曲、伸展、外転、内転の可動域が2分の1までには至らないものの4分の3以下に制限される場合が「機能障害を残すもの」として後遺障害等級第12級7号に当たります。
なお、股関節脱臼・骨折により、股関節を構成している大腿骨の骨頭が壊死した場合、壊死した骨を人工骨に変更する手術を行います。
また、股関節の屈曲、伸展において可動域制限がわずかに上回る場合(股関節の屈曲・伸展の場合には+10度を加えた数値以下の可動域制限がある場合をいう)には「外旋(仰向けになり、膝を曲げて脚を外側に開く運動)」「内旋(外旋とは反対の運動)」が参考運動とされます。
なお、この場合、可動域制限が2分の1以下に至っていない場合でも後遺障害等級第10級10号が認定されます。また、人工骨に置き換え、可動域制限が2分の1以下になった場合は後遺障害等級第8級7号が認定されます。
■下肢の短縮
後遺障害等級 | 後遺障害等級認定の条件 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|
第8級5号 |
1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
830万円 |
第10級8号 |
1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
550万円 |
第13級8号 |
1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
180万円 |
■神経障害
後遺障害等級 | 後遺障害等級認定の条件 | 後遺障害慰謝料 |
第12級13号 |
局部に頑固な神経症状を残すもの |
290万円 |
第14級9号 |
局部に神経症状を残すもの |
110万円 |
股関節を脱臼・骨折したものの、幸い機能障害や下肢の短縮が認められず、痛みだけが残るという場合があります。そうした場合は神経障害による後遺障害等級の認定を受けることができる可能性があります。
後遺障害等級第12級13号は、痛みの原因が3DCT(スキャン)、XP(レントゲン)、MRIによって証明できる場合に認定されます。
後遺障害等級第14級9号は、痛みの原因が3DCTなどによっては証明できないものの、事故の状況・態様、治療経過などから痛みが残っていることについ医学的に推定される場合に認定されます。
まとめ
股関節の脱臼・骨折は、運転席や助手席に乗車している際に前方から衝撃を受けた場合に負いやすい怪我です。
交通事故によって股関節周りがうまく動かない、治療はしたけれども痛みが残るという場合は後遺障害等級認定の申請を行う必要があります。